巨大なちいちゃんの日記

自転車、バイク、Magic the Gatheringについてつらつらと書きます

ネタバレアリで語ろうや①「仮面ライダーBLACK SUNは星一つ!」

どうも巨大です!

大人気コーナー!ネタバレアリで語ろうやの第一回です

今回はAmazon Prime videoで2022年10月28日から全10話で公開された「仮面ライダー BLACK SUN」について語っていこうと思います!

星一つです!

目次は以下のようになっています

  1. 創作物に対する基本的な巨大のスタンス
  2. 本作を視聴した動機
  3. 本作のおもしろくないと思ったところ(ネタバレアリ)
  4. まとめ

それでは早速語ろうや!!

 

1.創作物に対する基本的な巨大のスタンス

 私は幼い頃からアニメや漫画、小説、映画にドラマなど、様々な創作物に触れてきました。その頃は一視聴者、一消費者としてなんとなくコンテンツを消費していたのですが、ある頃からコンテンツのテーマ性や作品そのものがなぜ面白いのかというところを少しずつ言語化するようになってきました。そんな時、以下のポイントを意識してコンテンツに触れると、より楽しめるという自分なりのコツみたいなものがまとまってきました。

①作品のテーマは何か

 その作品の1番伝えたいものは何か、ということを意識するという観点です。戦争の悲惨さを伝えたいのか、人種差別の愚かさを伝えたいのか、人間の生きる力の素晴らしさを伝えたいのか、制作側の意図は必ずあるのでしょうが、自分なりにテーマを読み取ろうとしながら作品に触れるとより楽しめるような気がします。

②作品はそれ単品として成立しているか

 私は、創作物はその作品を一単位として成立しているかどうか、という点を意識しています。例えば、ある映画作品があるとして、その映画を一度観るだけで観客が満足できるかどうか、ということです。そのためには、作品の中で公開される情報について分類、注目する必要があります。

全ての観客に初見で共有される情報

  物語の進行上絶対に全ての観客が初見で理解できなければいけない情報です。どこまで初見で理解できるかという線引きが非常に重要なポイントになってきます。これが多すぎるとよくある登場人物にいちいち全ての事柄をセリフで説明させる駄作になってしまったり、ナレーションまみれの作品になってしまったりします。逆に少なすぎると結局どんな映画かわからなかったねという風になってしまいます。

  例1)登場人物Aは主人公と敵対する組織の幹部の息子で物語終盤で裏切った

  例2)B国とC国はDという資源をめぐって長年戦争をしている。Dは小国であるB国でしか採掘できないが、軍事大国であるC国は兵器を動かすための燃料としてDを独占したい

  例1、例2ともに作品を通してこの情報を観客が得られないと話の流れが全くわからなくなってしまいますよね。ただ、そこをナレーションやセリフだけの説明に頼らず、上手い塩梅で観客に伝えられるのが良い作品の条件の一つだと思います。巨大はけっこうこの情報の出し方やちゃんと出してるかな?という点に着目しがちです。私は一回観て意味がわからなかったらその作品は面白いとは思えません

その作品や製作者のコアなファンなら初見で共有される情報

  物語の進行上必須ではないが、理解できるとちょっと通ぶれたり、ニヤリとできたりする情報です。ちなみに巨大はけっこうこういう要素は好きです。確かめるために一度観た作品をもう一度観ることもあります。

  例1)登場人物Aが裏切り者という正体を明かす時、その監督が裏切り者が出た時によく使うBGMが流れていたから一瞬早く裏切り者だとわかる

  例2)同じ監督の別の作品でも物語の進行上重要なアイテムとしてDという物質が登場している

  どちらも作品の世界を広げてくれる情報ですね

作品を複数回視聴することで得られる情報

  結末を知った上で見返すとあ〜だからあの時!ってなるやつです。ただ、この情報とⅠの情報を使い分ける匙加減が非常に難しいところだと思います。その塩梅が良い作品は名作が多い気がします。

例1)登場人物Aは物語序盤の戦いで主人公が不利になるように(わざと)ミスをしている

例2)思いつきませんでした

 

Ⅳ作品以外の媒体から得られる情報

 映画のパンフレットを見たり、メディアミックスされた別媒体の作品から得られる情報です。この情報も作品の世界を広げてくれるのですが、この情報をⅠの情報として取り扱って欲しくないですね。作品はそれ一つで作品として完結していなければ私は嫌なので、作品としての完成度が低いと感じてしまいます

例1)登場人物Aは幼い頃に主人公に命を助けられているので裏切り者としての自分に葛藤している(幼い頃に助けられたことは映画のパンフレットにのみキャストインタビューとして記載されている)

例2)C国はB国以前にE国を侵略、制圧したことでDを兵器運用に活用する技術を得た(小説版の情報)

 

以上の2点を意識して創作物に触れているので、①テーマが理解できるかどうか、②初見でしっかり楽しめるか、ということが私の感じるさくひんの面白さにつながると思います。

 

2.本作を視聴した動機

 私は仮面ライダーファンです。リアルタイムではクウガから視聴していました。ブラックは少し世代がずれているのであまり触れられていませんが、大体のストーリーを知っていることや、オリジナル版のデザインが好きなところで本作は気になっていました。主人公二人のキャストも最近注目している俳優さんだったので視聴した動機の一つです。なぜか映画だと思い込んでいたのですが、ドラマで、しかもAmazonで観られると聞いて喜んだ覚えがあります。なので、一仮面ライダーファンとしてこの作品を視聴した、というのが本作を視聴した動機となるのでしょうか。

 

3.本作のおもしろくないと思ったところ(ネタバレアリ)

前述しましたが、私は初見で理解できるかどうかということも重視して作品を観ています。この記事も作品を一回視聴しただけの状態で執筆しています。見落としや間違いなどありましたら、Twitterでの返信やこの記事へのコメントでご指摘いただければと思います。なお、その際には「第○話のこの辺で説明しているよ」などとご教示いただけると助かります。

※ここから作品の結末に関わる重大なネタバレがあります。閲覧にはご注意ください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

①怪人の分類

本作は怪人への差別、人間と怪人の確執が大きなテーマとなっているのですが、その怪人の分類があまりにも説明不足ではないかと感じました。

作中でよく「下級怪人」という言葉が出てくるのですが、一体どんな怪人のことを下級怪人というのかの説明はありません。「上級怪人」が存在するかどうかも説明はありません。おそらくゴルゴム党の幹部や三神官など、戦闘力が高い怪人が「上級怪人」に相当するものと視聴者が推測するにとどまっています。また、なぜ、「下級怪人」なるものが存在するのかもわかりません。

これは、そもそもの怪人のルーツが物語の進行上かなり重要なポイントなのですが、そこも曖昧な説明になっています。

1.本編(2022年?)の80年前の旧日本軍(と思われる組織)の研究によって最初の怪人が生まれた=創世王

怪人を作るにはなんか大事そうな石(本編説明なし)とベルトを外科手術で体内に埋め込む

2.創世王が誕生した後は、創世王から採取される300mlほどのエキス(クジラ、ノミのセリフから推定)、なんか大事そうな石、ベルト(葵がベルトを持っていることからどうやら埋め込まれている様子)、生き物の死骸を使うことで比較的安定してその生き物の特徴をもった怪人を作ることができるようになった

3.怪人と人間(あるいは怪人と怪人も?説明なし)は生殖可能で生まれた子どもは怪人になる(ならないかもしれないがそこは説明なし)

つまり怪人の中には

Ⅰ.創世王

Ⅱ.創世王のエキスを元に改造された元人間の怪人

Ⅲ.Ⅱの怪人と人間の子どもとして生まれた生まれながらの怪人

Ⅳ.Ⅱの怪人と怪人の子どもとして生まれた生まれながらの怪人

ⅴ.Ⅲ、Ⅳの怪人の子どもとして生まれた生まれながらの怪人

の少なくとも五種類の怪人がいることが推察されるわけなのですが、その中で序列があるかどうかは不明です。(創世王は別格に強いことは本編描写アリ)

 スラム街で暮らしている下級怪人は恐らくⅴなのかと思います。怪人が実験で生まれたことを知らないようなので。というか、ⅴの怪人の数が多すぎるような気もするんですよね。創世王が改造されたのがおよそ80年前と考えると、その直後から生殖可能な年齢の若者がガンガン改造されていったとしても本編開始時点では第四世代、第五世代の怪人がほとんどなのではないでしょうか。それがあれだけの規模で世間に認識、差別されるレベルにまで増えているのは謎です。バスでの「このバス怪人乗せるの〜?」などのやり取りを見るに、少なくとも本作の舞台となった都市では人口の数%以上が怪人になっていると推測されます。仮に本作の日本の人口を1億人と仮定すると1%でも全国で100万人の怪人がいると考えられます。本作中の描写によると、怪人は子沢山というわけではなく、人間と同程度の出生率であることが推察されます。50万人くらいをⅡの怪人として改造したとしても、怪人は人工的なものではなく、自然発生したものだと思っているⅴの怪人はそんなに数が増えるのでしょうか?作中の描写では「怪人は500年前からいる」「怪人は人間より先に生まれた」と主張している怪人もしくは怪人を支持する人間がいるようですが、そんな吹けば飛ぶような主張をするでしょうか?このあたりのモヤモヤが最後まで解消されずに終わってしまったところが、おもしろくなかったと感じてしまったところの一つです。

 また、ベルトを持った怪人とベルトを持っていないと思われる怪人の表現も謎でした。作中、明確にベルトを持っていることが表現されているのはブラックサン=光太郎、シャドウムーン=信彦、カマキリ怪人=葵の3体のみですが、少なくとも改造されて人間から怪人になった怪人はベルトを持っているはずなので、そこは演出として明確に表現してほしかったところです。ベルトを持っている=改造された怪人=戦闘能力が高いといった図式が明確に表現されていればより違和感なく物語に没頭できたはずです。三神官は明らかに他の怪人よりも戦闘力が高いのですが、三神官だけでもベルトを見せるシーンがあったり、中にはベルトがないのに強い成り上がりの怪人がいたりすると、さらに多様なキャラクターの見せ方ができたような気がします。三神官がなぜ強いのかということも全く説明はありませんでした。

 怪人の自由意志についても疑問が残ります。作中、葵の父親が無理やりカニ怪人に改造され、葵を襲うシーンがあるのですが、父親の自由意志はどこにいったのでしょうか。その後、葵本人も無理やりカマキリ怪人に改造されるのですが、改造直後は暴走してブラックサンを襲ったものの、その後は自由意志をもって行動しています。この違いはなんなのでしょうか。葵の父親はまるで洗脳されているかのように葵を襲ってきていましたが、怪人または怪人と人間を洗脳する技術が確立されているのでしょうか。ちなみに、葵の父親を洗脳する描写はありません。堂波総理は裏で怪人を一体8000万円ほどでオークションにかけて売り出していましたが、洗脳済みの怪人を売っているのでしょうか。疑問は尽きません。

 

②キングストーンの扱い

 怪人は腹(胸?)に石があるそうです。これは明確にコウモリとクジラがニックに説明するシーンがありました。①で説明した怪人を作るときに使うなんか大事そうな石がこの石に該当するのだと考えられるのですが、この説明だと恐らく生まれながらの怪人も石をもっていることが推測されます。ブラックサンとシャドームーンは怪人に改造されるときに普通の石ではなく、キングストーンを使われていることが特別なようです。また、キングストーンは二つそろえることで強い力をもった怪人から新たな創世王を生み出すことができるため、非常に重要なアイテムとして作中では奪い合いが行われています。ですが、このキングストーンおよび怪人の持つ石の扱いが非常にお粗末なものに思えるのです。

 まず、第一にその石が何なのかという説明が一切ありません。科学者が大事そうに容器から取り出すシーンがありますが、生成過程についてはなんの説明がありません。創世王を生み出すキングストーンなら、最初に創世王が改造された時に使われた石、みたいなオリジンが必要な気がしますがそんなものはまったくありません。光太郎と信彦が改造される時に大事そうに容器から取り出されるだけです。

 さらには、その石がなんのために必要なのか、という点についても説明不足に感じます。キングストーンに関しては作中、光太郎と信彦がゆかりに「怪人は石を持っているんでしょう?見せて」と言われてでかい尿管結石が出たから持ち歩いてるぜぐらいのテンションでほいっと渡していましたがそんなに簡単に取り出せていいものなのでしょうか?そのシーンは作中の現在時点の30年前なので、30年間は光太郎、信彦共に石なしで生活しているハズなのですがなんの問題もないようです。怪人への変身もできます。作中では、最初はブラックサン、シャドームーン共に黒バッタ怪人、銀バッタ怪人に変身しており、キングストーンを体内に入れると仮面ライダーに変身するのかと思ったら特にそんなこともなく、感情の高まりで一線を越えたところで仮面ライダーに変身する、という流れでした。

 つまり、怪人がもつ石は、怪人を作る時には必要だがその後の生活や戦闘、変身にはなんの意味ももたない石、ということが推測されます。しかも取り出し自由です。このことからキングストーンも同様に、創世王を生み出すためには必要だが、その後の生活や戦闘、変身にはなんの意味ももたない石(創世王は恐らく変身しっぱなしだが)ということが推測されます。物語終盤ではキングストーンの力で光太郎が黒創世王となり、葵にサタンサーベルで刺されて絶命するのですが、肉体は灰になり、ふたつのキングストーンだけが残りました。キングストーンを破壊できるかどうかは作中では説明がありませんでしたが、作品終了後も創世王をめぐり、永遠にキングストーンの奪い合いが行われることが示唆されるシーンだと思いました。ここで気になってくるのは、じゃあ普通の怪人に石って必要なの?という点です。怪人にとっての石は変身する時に必要、とか力の源、とかいう設定がある上でその上位互換としてキングストーンが存在する、とかならよかったのですが、その辺りがもやもやしました。うまく言語化できないのですが、作中序盤から「キングストーンはキングストーンだからすごいんだ!奪い合うんだ!」と押し付けられているような気がしてあまりおもしろく感じられませんでした。

 ちなみにサタンサーベルの設定はgoodでした。創世王を守る剣が創世王を倒すための剣という設定も、その情報が公開されるタイミングも非常に良かったです。ビルゲニアから葵へと所有者が移る過程も良かったですね。

 

③唐突な「変身」

 物語中盤で光太郎は黒バッタから完全態である仮面ライダーに「変身」するようになります。これまでは無言で変身していたのにここからはポーズもつけて「変身!!」と叫んでから変身するようになります。なぜでしょうか。物語後半で信彦は銀バッタから完全態である仮面ライダーに「変身」するようになります。これまでは無言で変身していたのにここからはポーズもつけて「変身!!」と叫んでから返信するようになります。なぜでしょうか。物語終盤には葵が人間態からベルトを出して、ポーズをつけて「変身!!」と叫んでから返信するようになります。これは、光太郎の意思を受け継いでいるからとわかります。問題なのは、光太郎と信彦の「唐突な変身」です。

 この作品のエンディングから、作品の重要なテーマの一つとして「戦う意思が受け継がれる」というものがあると感じました。葵は光太郎の意思を受け継いだので「変身」します。それは明確に描写されていて、納得のいく展開です。ではなぜ光太郎と信彦は「変身」するのでしょうか。二人とも、なぜか完全態になった途端に唐突に「変身」するようになりました。作中に明確に登場する完全態は光太郎と信彦の二人だけですが、ダロムあたりが「完全態になったのか、、、」と驚いていたので怪人80年の歴史の中では完全態になった怪人は何体か確認されているようです。ちなみに「完全態」という言葉もこのダロムのセリフで一回登場するだけだったと記憶しています。では、「完全態」とは何なのでしょうか。作中では一切の説明がありません。ブラックサンとシャドームーンは姿が変わって明らかに戦闘力が上がっている感じがしますがそれ以外の描写は見受けられません。ブラックサンとシャドームーン以外に完全態の怪人がいるのかどうかもわかりません。完全態になると「変身」しなければならないという設定があるのかと思いきやそういった説明も全くありません。二人とも、なぜかそんな約束事があったかのように、完全態になった途端に「変身」するのです。過去編で「俺は人間でも怪人でもあるんだ。だからどっちの命も大切にしたい。そんな命を守るために"変身"して戦ってるんだ」という人物の影響を受けているのならわかるのですがそんな人物は存在しません。二人の変身シーンはとてもかっこいいのですが、それに至る動機が不明すぎるので「どうした光太郎?」「どうした信彦?」という疑問が先に出てきてしまうのです。

 

④「ヘブン」は必要だったのか?

※11/16に追記

 作中のアイテムとして「ヘブン」というものが存在します。ゼリー状で怪人が経口接種することで快楽を得ることができるようです。その他に、ヘブンを食べ続けると歳をとらなくなる、治らなそうな怪我が治る、訓練をした後に(身体を痛めつけたあと?)にヘブンを食べるとなんかいいらしい、などの効果があります。訓練したあとにはヘブンを食え!っと言われて食べた怪人たちがうおーってなってたのでより力が強くなるとかなんかそんな効果があることが推測されます。

 ヘブンの材料は創世王から採取されるエキス人間です。作中、創世王は死期が近づいており、採取できるエキスの量が減っているため、それに伴い生成されるヘブンの量も限りがあることがちょっと問題になっています。ゴルゴム党には「残りのヘブンは全て総理に回すぞ」派がいたようですがこの発言の真意は不明です。怪人を作らせていた総理(現総理の祖父)と現総理を同じくルー大柴さんが演じているので、総理は実は怪人で、ヘブンを取り続けることで代替わりを演じつつ総理であり続けたことを暗示しているのかと思いましたがそんなことはありませんでした。総理は普通の人間のようなので総理自身にはヘブンは必要ありません。おそらく、演出上は総理も怪人なのでは、、、という推測をさせるためのミスリードだと思うのですが、それにしても整合性はとって欲しいものです。総理の側近の怪人のためにヘブンを確保する必要があるとか、総理の妻が怪人だからヘブンが必要とか、そういう理由づけが必要だと思いました。

 また、ヘブンのもう一つの材料が人間、というのも引っかかる点でした。恐らく、怪人は人間を食べることで力を得る、人間とは共存できない生物である、ということを表現、強調したかったのではないかと巨大は推測したのですが、そのためにゴルゴム党に人間奴隷を囲っているという設定は流石にむちゃくちゃだと思いました。ゴルゴム党に囲われている人間奴隷達はヘブンの材料である他に、怪人化させてオークションに出される商品でもあるように描写されていました。作中では明確に、怪人と人間が共存するスラムが存在することが描写されているのですが、そこから攫ってきたのですかね?作中では怪人に対する人間や差別的な態度や行為が問題になっていますが、流石に人間をぽこぽこ攫ってくるのはいかがなものでしょうか。怪人が人を攫って食っているという噂が流布されている、など怪人をスケープゴートにするような描写があればまだ納得できるのですが、特にそのような描写はありませんでした。怪人がいます、人間もいます、人間がけっこう行方不明になっています、以上です、と言われても流石に納得できません。怪人による食人文化が噂されていることや、行方不明者が異常に多いなどの描写は必要だったのではないでしょうか。前者は怪人差別の過激派であるヘイターにメガホンで喋らせれば描写できますし、後者は何度かある国会での審議のシーンで話題に出したり、行方不明者のビラが大量に貼られた掲示板を映したりするだけで描写できるはずです。これらの描写がないために、よくわからねえ再現して食べてみたらちょっと美味しそうなヘブンという可哀想なアイテムが出来上がってしまいました。

 さて、忌み子として誕生してしまったヘブンですが、製作サイドとしては実は重要な意味をもっていました。ヘブンの効果①である食べ続けると歳を取らなくなるという設定により、西島 秀俊さん(51歳)と中村倫也さん(35歳)(両名とも記事執筆時点の年齢)を同い年として無理なく描写することができるのです!本作では、現在(恐らく2022年)と30年前を交互に描写していくことでストーリーが展開していきます。この手法は巨大は結構好みです。仮面ライダーキバもこんな感じでしたよね。中村倫也さん演じる信彦が30年前から歳を取らなくなったことで、30年後の現在でも中村倫也さんのまま演じることができるよ!そうじゃないだろ!!!!それはただのキャスティングの都合、はっきり言ってミスだろ!!

 このキャストで物語を展開したいのであれば

A案:ヘブンの描写をちゃんとする

B案:創世王は30年に一度の日食の日にしか生まれない。信彦は光太郎の次の日食の日に生まれた、など、年齢が違うことが納得できる脚本を書く

の2沢しかないと巨大は思います。ここに

C案:いっけなぁーい。同い年のキャラクターに全然年齢が違う人をキャスティングしちゃったぁ。あ!歳をとらなくなるアイテムを登場させればいいんだぁー。

をやった(ように見える)のが本作です。十分に描写されていれば、人間と怪人が根本的に共存できないという物語の根幹に迫るアイテムになったはずのヘブンが、キャスティングの道具に成り下がってしまったのです。

 

4.まとめ

 以上のように、

①本作の重要なテーマになっている怪人差別、怪人と人間との確執の本質へと至る怪人の設定の不明瞭さ

②作中での最重要アイテムであるキングストーンの扱い

③最も視聴者が求めていたであろうかっこいい「変身」の動機が行方不明

④重要なはずなのに描写があまりにもお粗末なため、キャスティングの道具に成り下がった「ヘブン」

という3点が気になってしまい、この作品は面白くないと評価しました。他にも、あの貝の汁はなんだったのか?など疑問は尽きません。

 もちろん、良かった点もあります。前述した通りサタンサーベルの設定はよかったですし、キャスティングもいいですね。仮面ライダーやベルトのデザインも素晴らしいですし、何より最終回のオープニングが良かったです。途中で挫折してしまった人にも、最終回のオープニングだけは観ていただきたいと思っています。

 そんな良かった点も含めて、仮面ライダーBLACK SUNの最終評価は星5つ中の星1つです!

 以上!巨大でした!